第3問
答え:パリ協定
パリ協定とは、2020年以降の気候変動問題に関する、国際的な枠組みです。1997年に定められた「京都議定書」について覚えておられる方は多いでしょうが、パリ協定はこの京都議定書の後継となるものです。
パリ協定は、2015年にパリで開かれた、温室効果ガス削減に関する国際的取り決めを話し合う「国連気候変動枠組条約締約国会議(通称COP)」で合意されました。こうした取り決めは合意されるとすぐに効力を発揮するものではなく、発効するための条件が設けられます。パリ協定では、以下の2つが発効条件でした。
▶55カ国以上が参加すること
▶世界の総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准すること
専門家の間では条件が満たされるには時間がかかるだろうと考えられていましたが、当時の米国・オバマ大統領が中国やインドに批准を働きかけるなどした結果、2016年11月4日に発効しました。それだけ世界各国の地球温暖化に対する関心が高まっているといえます。
結果、パリ協定には、主要排出国を含む多くの国が参加。締結国だけで、世界の温室効果ガス排出量の約86%、159か国・地域をカバーするものとなっています(2017年8月時点)。2016年11月に開催されたCOP22では、2018年までに協定の実施指針などを策定することが合意されました。
▶パリ協定が画期的といわれる2つのポイント
パリ協定は歴史的に重要な、画期的な枠組みであるといわれます。その理由には、次のようなポイントが挙げられます。
①途上国を含む全ての主要排出国が対象
パリ協定が歴史上、最も画期的である点は、途上国を含む全ての参加国に、排出削減の努力を求める枠組みであるということです。
京都議定書では、排出量削減の法的義務は先進国にのみ課せられていました。しかし、京都議定書が採択された1997年から今日までの間に、途上国は急速に経済発展を遂げ、それに伴って排出量も急増しています。実際、2016年の温室効果ガス排出量シェアを国別で見ると、中国が23.2%で1位、インドが5.1%でロシアと並んで同率4位となっています(日本の温室効果ガス排出量シェアは2.7%)
途上国に削減義務が課せられていないことは、参加国の間に不公平感を募らせる要因となりました。それが一因となって、京都議定書は当時最大の排出国であった米国も批准せず、議定書の実効性に疑問符がつくこととなっていました。
そこでパリ協定では、途上国を含む全ての参加国と地域に、2020年以降の「温室効果ガス削減・抑制目標」を定めることを求めています。加えて、長期的な「低排出発展戦略」を作成し、提出するよう努力すべきであることも規定されています。
②日本の提唱で採用されたボトムアップのアプローチ
パリ協定が画期的な枠組みとされるもう1つの理由は、ボトムアップのアプローチを採用したことです。
京都議定書は、先進国のみにトップダウンで定められた排出削減目標が課せられるアプローチを採用していました。このトップダウンのアプローチに対して公平性および実効性の観点から疑問が呈されたことを踏まえて、パリ協定では各国に自主的な取り組みを促すアプローチが模索され、採用されました。この手法は、協定の合意に至るまでの国際交渉において日本が提唱して来たものです。
これにより、各国の削減・抑制目標は、各国の国情を織り込み、自主的に策定することが認められています。