特集記事

未来にタイムスリップ! オーディオアニメドラマで楽しく
エネルギーと未来社会について考える
― 川崎市立南大師中学校 矢坂健太郎先生 ―

2022/10/31

川崎市立南大師中学校では、中学2年生を対象に、技術の時間を使って矢坂健太郎先生がエネルギー問題について考える授業を実施しました。オーディオアニメドラマ「エネルギータイム!」第1話を通して、未来の日本のエネルギーについて考えます。

矢坂健太郎先生

■「エネルギータイム!」とは

中学生の4人が、ひょんなことから2030年/2050年にタイムスリップするSFショートストーリー。3話構成になっており、それぞれ独立して使用できる設計になっています。
オーディオドラマには、水瀬いのりさん、深川芹亜さん、沖佳苗さん、寺島拓篤さん、葉山翔太さん、七瀬彩夏さんら人気有名声優が登場します。
さらに、専用ワークシートや学習指導案の他、大人気予備校講師である亀田和久さんによるCGやアニメーション資料を用いた解説動画も併せて展開されるコンテンツとなっています。

第1話 『第1話:未来の暮らしはどう変わる?』

2030年の未来にタイムスリップしたヒカリとフーコの2人が、進化した未来の暮らしや発電などエネルギーを知る。

●難しい、堅い、とっつきにくい! エネルギー問題を取り組みやすく

--エネルギーについては1学期でも学習しましたか?
矢坂先生私は技術・家庭科の技術分野を担当しているんですが、 「エネルギー変換の技術」という内容を授業でやっています。大体2年生の1~2学期のあたりで指導する中学校が多いようです。私の場合は、1学期は生物育成の技術をやるので、2学期にエネルギー変換の技術を教えています。
内容としては、未来の照明器具の開発ということで、生徒に考えてもらったり、光センサーを搭載したLEDライトを組み立てたりといったようなことを行っています。あとは、川崎市に新しく発電所を建設してみたらどうかとか、そういったシミュレーションを考える授業なども実践しています。
エネルギーの授業の内容は学習指導要領に沿っていればどんなものでもいいので、各学校で工夫しながら行っているところですね。

--「エネルギー変換の技術」は2学期からと言うことでしたが、今回が初回ですか?
矢坂先生今日が初めてです。1番最初の導入のところですね。途中になってくると、知識を定着させないとならないので、まずは導入で興味をもたせようと思いました。「エネタイ!」はこういうガイダンス的な導入に用いるのもいいのではないかな、と思います。

--「エネタイ!」を授業で使うことのメリットは?
矢坂先生私たち教職員は、教えたり伝えたりすることに関しては確かにプロなのですけれど、教える内容についての知識についてはプロとまでは言えないと思います。やはり、きちんと内容を考えて編集された動画とか、それこそ塾講師の方の解説動画だとか、そういった話の方がより専門性があると思うんですね。
今回の副教材は、プロの声優が起用されているオーディオドラマですよね。そういったことも有効的だと思いますし、専門家の知識と私たち中学校教師の教え方、伝え方というものをうまいこと融合させることによって、教育効果が高まるんじゃないかなと思っています。

「エネタイ!」教師用ガイド。
授業の進め方やポイントが記載されています。

--お話に出たとおり、「エネタイ!」では、アニメなどで人気の声優を起用しています。また、キャラクターも若者に親しみやすいものとなっています。生徒の反応はいかがでしたか?
矢坂先生今日は計3クラスで実施したのですが、クラスによって違いましたね。好きな子はすぐ分かるみたいです。また、人間じゃないキャラクターがいましたよね、あれがかわいいと思ったのか、面白いと思ったのか、そういうのには食い付いたりしている様子はありました。物語そのものも、未来にタイムスリップするとか、ありがちではありますけどわかりやすく、生徒の反応は良かったと思います。

--動画教材は普段から授業で使われますか?
動画に関しては、川崎市の中学校にChromebookが導入されたことによって、気軽にYouTubeも見せられるようになっています。指導する内容について、そんなに深入りせずに、短時間でさらっと、こんな感じなんだよと紹介するのに、動画はかなり向いているのではないかなと思います。教師用のデジタル教科書も使っていますが、その中に入っている動画なんかも授業でかなり使っています。

本編を見た後は亀田先生の解説動画で
エネルギーに関する技術についての理解を深めます。

--「エネタイ!」とほかのデジタル教材を比較するとどうでしょうか?
矢坂先生デジタル教科書は教科書準拠となるので、やはり内容がちょっと固いんですよね。ですから、生徒も本当に聞いているだけになってしまうというか。「エネタイ!」は、ちゃんと物語があるので食いつきやすく、「勉強しよう!」という感じではなく、日頃のテレビを見ているような感覚で見られたのではないかと思います。
内容もコンパクトにまとまっていますね。ちょっと理科寄りだなとは思いましたが、理科と技術分野は常に隣り合っている部分がありますので、よかったのではないでしょうか。

--「エネタイ!」を活用することで子どもたちにどんな学習体験を提供できますか?
矢坂先生エネルギーの授業って、やはり理系のイメージが強いですし、原子力問題などすぐには解決できない社会問題もありますので、子どもとしては難しいし、堅くてとっつきにくいものだと思うんですよね。
そこに、未来はこうなってるよとか、こうなっていたらいいよねとか、夢とか願いといった要素を入れてアプローチすることによって、子どもが元々もっている発想を豊かにしていくことができるのではないでしょうか。

●ワークシートをデジタル化! みんなで書き込んで、その場で共有し一緒に考える!

--今回の授業で工夫された点は?
矢坂先生今回は紙のワークシートではなくて、Google Jamboard*を利用しました。これを個人ワークとグループワークの両方に取り入れました。
※Google Jamboard
Googleが提供する電子ホワイトボード。クラウドベースなので、複数人で同じJamboardにアクセスし、リアルタイムに内容を共有することができる。

「エネタイ!」を見ながら気になったワードをメモするためのワークシート。
今回は紙ではなく、Jamboardで提供されました。

Jamboardの付箋機能を利用して、どんどんメモを書き込んでいきます。

班で同時編集もできますし、私も生徒たちの作業の様子を1台のパソコンで確認することができます。今回は班でまとめた内容をモニターに映して、他の班はこんなことをやってるんだなということも見せました。

班でのグループワーク。
Jamboardを使って共同編集しながら作業を進めます。

班でまとめた内容を、モニターに表示して共有します。

それから、今日作業した内容は保存されているので、いつでも見られるようになっています。こういう授業をやる時は普通、大きな模造紙に付箋を貼ったりするのですが、そうなると、その模造紙をその後どうするのかという問題があります。教室に貼ったりもするでしょうが、最終的には処分してしまうんですよね。
それに比べてデータで残りますから、いつでも見返して思い出すことができます。そういう良さはあるんじゃないでしょうか。

--生徒自身も見返せるのですか?
矢坂先生はい、いつでも見返すことができます。私の方で設定すれば、他のクラスのものも見ることができます。それを毎年積み重ねていけば、あ、去年の先輩はこんなこと考えていたんだなとか、そういうふうに使うこともできますね。

●子どもの発想をさえぎらない声がけを それがスムーズに授業を進めるコツ

--今回の授業は、まずは「エネタイ!」を見ながら、個人個人で気になったところをJamboardに付箋で貼り付けていき、その後班で話し合うという流れでしたが、スムーズに進んでいましたね。
矢坂先生最初に個人で考えて、その後で班で話して最後的にクラスで共有するというのは、言わば定番の流れなんですよ。子どもたちも普段から技術以外の授業でも取り組んでいるので、時間を示してあげれば問題なく進められます。

--ワークの間は先生も積極的に声をかけられていましたね。
矢坂先生何というか、どんどんあおることです。時間ないよとか、どんどんやろうね、なんでもいいよ、とかそんな感じで。あとは、子どもの発想をさえぎらない範囲で、どんどんヒントを出すようにしています。あまりヒントを言い過ぎると、そっちに寄っちゃうので。

生徒たちが話し合っているときにも声がけをして、発想のヒントを出していきます。

授業の最後には亀田先生のコメントを聞いて自分たちの未来について考えます。

--授業を準備するにあたり、大変だったことはありますか?
矢坂先生日頃からテレビとか、Chromebookとかは使っているので、特に準備が大変だったということはなかったですね。動画もワークシートも1セットで用意されているので、具体的に用意するものもありませんでした。
分かりやすくて楽しい授業をするために、先生方が一番苦労しているのが授業準備です。
「エネタイ!」のように、完成された、形のあるものを提供していただければ、時間をかけずに準備できます。完成された教材があって、そこからどう工夫していくのかはこちらの仕事なので。ほかの先生方も取り入れやすいと思います。

--「エネタイ!」を使った授業計画をほかの先生に進めるとしたらアドバイスがありますか?
矢坂先生教材をそのまま使うのではなく、各学校の目の前にいる生徒たちに合った形で組み直すことも必要なのかなと思います。技術分野、理科、社会、総合的な学習の時間など、どの授業で取り上げるかでもやり方は違うと思います。子どもたちが、エネルギー学習をすることが楽しみと思えるように役立てていただけるとよいのではないでしょうか。

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