かべ新聞コンテスト
講評
最終審査委員長
山下宏文
最終審査に残った作品の特長としては、まず、しっかり問題意識をもって新聞づくりをしていることです。そして、自分たちが生活する地元の取組に目を向けるとともに、実際に調査や取材をして記事にしているものも多くあったということです。さらに、そうした明確な問題意識と根拠のあるデータや具体的な調査に基づき、自分の考えや意見を表明できていることもよかった点です。今後もこうしたことを重視してかべ新聞づくりに取り組んでもらえることを期待します。
取り上げられた内容を見ると、再生可能エネルギーに関するものが最も多くなっていますが、太陽光、地熱、バイオマス、水素、水力、風力、雪氷熱、振動などさまざまなエネルギーへの着目がありました。また、核融合やAIといった科学技術への期待、ゼロエネルギーハウスや日常生活における省エネ、電気料金の高騰や戦争といった現在の社会的状況への着目など、例年以上にバラエティー豊かな内容が扱われていました。
最優秀賞となった「環境にやさしいエネユキー新聞」は、夏の暑さを実感し、「温暖化を遅らせるためにできることは何だろう?」との問題意識から、自分たちの生活する北海道という地域の特性を踏まえ、「雪氷熱」と「木質バイオマス」の二つに焦点をしぼりました。そして、それぞれの利点や欠点をしっかり捉えたうえで、実際にそれらのエネルギーを利用している施設を訪れ、インタビューをして取組の概要や展望を分かりやすく記事にしています。
もうひとつの最優秀賞である「温故知新 移り変わるエネルギー」は、「自分の住む町が発展するときに使ったエネルギー資源は、どこから来たのか」というピンポイントな問題意識から始まります。石油が使われていたことを調べ、石狩油田跡を実際に訪れ、その途中の石狩湾新港で見た建設中の洋上風力発電についても調べます。その上で、北海道における再生可能エネルギーの利用がどうなっているのかと問題意識を広げ、最後にエネルギー資源の変遷を踏まえながら、これからのエネルギー利用を考えています。
二つの作品ともしっかりした探究に基づいて自分の考えを形成し、それを分かりやすく表現しており、審査員全員からとても高く評価されました。
本コンテストの今後の課題としては、このかべ新聞づくりにさらに多くの小学生が参加できるようにすることが何より必要です。また、昨年度から始めたデジタル作品の充実も進める必要があります。デジタル作品は、まだ積み上げが浅いこともあるかと思いますが、その利点をうまく生かし、これまでとはひと味違ったおもしろいかべ新聞が登場することを期待したいと思います。
北海道/札幌市立桑園小学校
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