特集記事

カルタで楽しく学び、クロスワードでさらに理解を深める
― 京都市立二条中学校/八日市 律子教諭 ―

2022/10/5

京都市立二条中学校では、八日市律子教諭が手作りした絵本、カルタ、クロスワードパズルが教材として使われています。生徒たちは教材を使いながら、家庭科の授業の中で、エネルギー問題への理解を深めていきます。この教材は、昨年度データ化され「SDGsエネルギー学習推進ベースキャンプ」のページから、誰でもダウンロードして使うことができます。
絵本・カルタ・クロスワードそれぞれ個別のデータになっており、単独使いもセット使いも授業に併せてご活用いただけます。

●ゲーム教材で楽しみながら学ぶ。「楽しい!」から深まる理解。
--授業では、エネルギー問題に関するキーワードが登場するカルタやクロスワードパズルが使われていましたね。生徒たちが興味を持って、楽しみながら理解を深めていく様子を見ることができました。

八日市先生授業は最初に、私が作った絵本「地球温暖化って何?」を読むところからはじめます。絵本を導入とし、地球温暖化問題について考える気持ちを高めてもらうのが、目的です。
次に、各班にカルタの取り札を配ります。カルタは、エネルギー・環境問題に関するクイズ形式になっているので、楽しみながら問題の概要を理解することができます。かなりにぎやかになっていた班もありましたが(笑)今回は私が読み札を画面に表示しながら読み上げて、生徒のみんなが取り札をとる方法にしました。

授業は、地球温暖化や電気が届くまでの過程などを
わかりやすく描いた絵本の読み聞かせから始まります。
絵本といえども内容は中学生でも学びが深まるものになっています。

各班5人の生徒たちに取り札のカルタが配布されます。
読み札がクイズの問題になっていて、取り札が答えになっています。

読み札が読まれると、生徒たちは積極的に取り札を見つけて、
手元にためていきます。札を取って「よっしゃー!」と歓喜する姿も。

八日市先生カルタの後は、クロスワードパズルに挑戦します。カルタに登場したキーワードが、そのまま次に挑戦するクロスワードパズルに出てきます。難しい言葉が多く、いきなりパズルに挑戦しても埋められないかもしれないですが、先にカルタをやることで復習になり、知識を定着できるんですね。

カルタに続いて、生徒たちはクロスワードパズルに挑戦します。
「さっきのカルタででてきたの何だっけ?」と思い出しながら解答を進めます。

--教材を作る上で工夫したことは? 他の先生もすぐに利用できますか?
八日市先生生徒たちが興味をもち、わかりやすくイメージできるように、絵を工夫しました。例えば、海面上昇を表すのに、海の絵だけでは伝わりにくいので、ホッキョクグマのイラストを追加したりしています。
絵本、カルタ、クロスワードパズルは、PDFやPowerPointのファイルとしてダウンロードできます。授業計画も併せて掲載しているので、他の学校の先生も、すぐに授業で使ってもらえると思います。
カードはコピー用紙に印刷でもいいですが、厚紙に印刷したり画用紙に貼ったりするとより破れにくくなると思います。私はさらにラミネート加工していますが、ここまでやるのはちょっと時間もかかってしまうと思うので。

●家庭分野だけではない!「教科の壁」を超えて社会・理科・技術分野もつなぐクロスカリキュラムを実践

--家庭科のエネルギー授業は初めてですか? 生徒たちは資源の輸入や、二酸化炭素の問題など、事前の知識をしっかり持っていましたね。

八日市先生家庭科のエネルギー授業は今回が初めてでしたが、実はエネルギーの授業は他の科目と連携しています。社会、理科、技術分野と、違う教科ともつながっているんだというイメージをもってもらいたい、全ての学習がつながっているんだということに気づいてほしいという私の思いもあります。
各教科の先生方にも、エネルギー問題に関する授業の時には、意図的に強調してもらうようにお願いしています。文部科学省が推進するクロスカリキュラムを実現する課題としても最適ですね。

--生徒たちからの授業の感想には、どのようなものがありますか?
八日市先生授業の最後には、「未来に向けて、私からの提言」として、意見をまとめてもらいました。ワークシートを埋めてもらうほか、生徒の端末でアプリの「ロイロノート」を使って発表してもらうのもいいと思います。全員の意見をすぐに共有して、見ることができますし、手を上げて発表するのが苦手な生徒も、参加しやすいですからね。
提言の内容には、「問題解決のために技術革新が必要」「地球温暖化ってわかってはいるけど行動に移せない自分がいる」「学んだ内容を周りにも広めていきたい」といったものがありました。
私のほうから「こうしていってください」って言わなくても、生徒が自ら「こうしていきたい」って考えるようになります。この短い授業の時間だけで、ここまで理解を深めてくれたのは、すごいことだと思います。
自分事として考え、さらに自分だけじゃなく、社会全体、日本全体の問題として考えられるようになる、教材を活用してこうした考え方を引き出すことができると思います。

積極的に発表したい生徒たちは、挙手して
「解決のために自分たちが何かをしようとすることが大切。まずは省エネの生活を行うことから」
「温暖化などまだまだ知らないことがあったことに授業を通して気づくことができた」
などの意見を述べました。

ロイロノートを使って、それぞれの提言を発表し合います。
授業の後にはワークシートにも記入しました。

[その他の感想]

・この授業をして,私は地球・世界で取り組んでいる環境を守るための事を知れてよかった。今までなんとなく雰囲気で知っていたことも「なるほど」を理解できた。クロスワードはとても楽しく,また何回もしたいと思いました。

・地球にはたくさんの問題や課題があり,それらは私達に大きく関係しています。地球温暖化問題だけではないので,その改善策や解決策を考えて実行していきたいです。

・中学生ができることは身近なものなので、節電、リサイクル・リユース・リデュース(3R)を意識していく。分かっていてまだ行動できていないので行動に移すことができるようにする。

・大きな問題である地球温暖化ということについて、自分にできることは何かを考えることができた。しかし、自分一人でなんとかできる問題ではない。だからこそ、日本全体が考えを改める必要があると考えた。

●せっかくの学びがその日限りではもったいない!他の単元にもつなげ、線で学んでいく
--この後の授業ではどのような展開を考えられていますか?

八日市先生家庭科では、“食生活”に関連して「エコクッキング」、“住生活”では「環境にやさしい住まい」などをテーマにした授業を行うなど、くり返しエネルギー問題に触れていきたいですね。

また、アウトプットの方法として、生徒たち自身がエネルギー問題について伝える絵本を制作しました。私が勤めていた別の学校では、絵本を作って地域の保育園に読み聞かせするという授業を行ったこともあります。

--先生の授業は、様々な教材を手作りされていて、生徒たちが最後まで興味を持って参加していたことが印象的でした。

八日市先生今回授業で使った以外にも、様々な教材を用意しています。体験した生徒たちからは、次の授業でも、また教材を使った授業をしてねって言われますね。

[八日市教諭が手作りしたさまざまな教材の一部]

エネルギー問題について書かれたカードを並べる「七並べ」。様々な発電方式について、メリット、デメリットが書かれています。

エネルギー問題に対する取り組みについて、
クイズに答えながら理解を深められるカードゲーム

エネルギー教育について学ぶための絵本は、当時在籍していた中学校(京都市立西京高等学校附属中学校)がエネルギー教育モデル校に選ばれたことをきっかけに制作したもの。同校の取り組みは、2018年度の日本電気協会(電気新聞)主催の「エネルギー教育賞」において、中学校の部で最優秀賞を受賞しました。

ページトップ ページトップ