特集記事

副教材を使って資料から視覚的にエネルギー問題を学び、アクションにつなげる
― 三豊市立下高瀬小学校 萬亀弘吉校長 ―

2022/10/21

三豊市立下高瀬小学校では、4年生を中核として、エネルギー教育に取り組んでいます。今回取材した、萬亀弘吉校長による総合学習の授業では、副教材「かがやけ!みんなのエネルギー」を利用し、身近なエネルギーについて、そして輸入にたよる日本のエネルギー資源について、先生の作成したワークシートも使いつつ、理解を深めていました。

●教科・学年を超えて段階的に学びを深める
--総合的な学習の時間は何時間くらいあるのですか?

萬亀先生4年生では、総合的な学習の時間は70時間あり、その中でエネルギー教育を進めていくように、年間の計画を作成しています。副教材の「かがやけ!みんなのエネルギー」は、そのほとんどの授業で活用しており、企業や大学と連携したような学習も進めています。

副教材「かがやけ!みんなのエネルギー」

--副教材は全員が持っているのですか?

萬亀先生4年生全員に1冊ずつ配って学習を進めています。4年生にとっては難しい内容も含まれているので、それを5年、6年でも続けて使っています。

--3年間という長い間使える教材だということですね。ほかに、この副教材を使うメリットとはなんでしょうか?

萬亀先生この副教材は、いろいろな教科の授業の中で使えると思います。社会科の発展教材として4年生で電気をテーマにした授業もありますし、もちろん理科でも発電電気に関わる授業があります。また、家庭科では 夏涼しく暮らそうとか、冬暖かく暮らそうといったような暮らし方の授業もあるので、そういう教科とも繋ぎながら使うことができると思います。もちろん、そういったものを合わせて、総合の学習でも使えます。どの教科にも関わってきている部分が多々あるので、そこにもメリットはあると思います。

目次

下高瀬小学校での副読本の主な利用内容
・ P4~5 2夜の地球を見てみよう!(パネル展)
・ P16~17 調べてみよう! 身近なエネルギー(1h)
・ P20~21 電気の道のりをさかのぼってみよう(1h)
・ P22~26 発電のしくみを見てみよう(4h)
・ P34~35 エネルギー資源を知ろう(補助的活用)
・ P36~37 輸入にたよる日本のエネルギー資源(1h)
・ P40~41 かぎりあるエネルギー資源(補助的活用)
・ P42~45 エネルギーと地球環境問題 地球温暖化ってなんだろう?(3h)
・ P54~57 省エネしよう!(補助的活用)

●見て聞いてインプットし、自らの手を動かして「自分ゴト化」する
--授業では副教材だけでなく、ワークシートも利用されていましたね。

萬亀先生はい。副教材P.20~21「電気の道のりをさかのぼってみよう」を活用した授業では、電気は生活の中で大切なものである、といった認識を持たせた上で、じゃあその電気はどこから来るんだろうということで、実際に自分たちが使っている施設などの写真を使ってワークシートを作りました。

副教材P.20~21「電気の道のりをさかのぼってみよう」

「電気の道のりをさかのぼってみよう」で使用した自作のワークシート。

ワークシートで電気の道のりを追う授業の中で、四国電力からもらった実物の送電線を子どもたちに触らせたりもしました。

電力会社から電気を送り出す際の送電線を実際に触りながら、電気の道のりをたどります。

萬亀先生こうして実際に太い送電線を触ってみることで、最初はこの太い電線だったのが、だんだん細くなっていくんだということを認識させています。そして、それはなぜかということを考えさせました。電圧というのは4年生には難しい内容です。でも、「一気に強い電気を太い電線で送ったら、弱めないとみんなの電化製品には適合しないよね」という話をした時に、ある子が、「発電所から細い電線で電気を送るとしたら、日本中が電線だらけになってしまう」と気づきました。

また、四国電力の方から、台風などが来る場合には前日からが勝負で、発電所に泊まり込んで24時間保守点検をしているんだという話を伺い、そうやって自分たちの生活を守ってくれているんだ、というような認識も持たせています。

--「輸入にたよる日本のエネルギー資源」では、どのような授業をされたのですか?

萬亀先生まず一通り火力発電とか、原子力発電とか、風力発電とかの勉強をした後で、じゃあ、そのエネルギー資源は、どこから輸入しているんだろうということを学習問題として、 副教材P.36の「輸入にたよる日本のエネルギー資源」を取り上げました。

副教材P.36~37「輸入にたよる日本のエネルギー資源」

ここでは、石炭と石油と天然ガスなどの輸入先が示されています。これを元に、子どもたちに、ワークシートの白地図にそれぞれ色を変えて色塗りをさせました。 世界地図と副教材と比べながら、副教材でグラフも見ながら国名を調べて、世界地図で位置を調べて、ワークシートに色塗りをしていくという作業です。

「輸入にたよる日本のエネルギー資源」の自作のワークシート。

さらに、電子黒板上で、例えば中東の方からの輸入経路とか、タンカーで運んでくる経路とかも示していきました。

実際に地図に色を塗ってエネルギーの輸入元について調べていきます。電子黒板を使ってさらに輸入ルートについても学びます。

--副教材を読むだけではなく、ワークシートを使ったりして実際に子どもたちが作業をすることにより、さらに理解が深まるというようなことがあるでしょうか?

萬亀先生知識を一方的に伝達するだけではなく、自分たちで色分けをすることにより、たとえば石油の輸出国はこのあたりに固まっているね、といったようなことが実感としてわいてきます。こういった副教材で、正確な情報や新しい知識を得ながら、作業であったり、体験だったりを組み合わせていくのが大切なのだと思います。

今回の授業で子どもたちが考え、理解したことは、まずお金を出して資源を輸入しているんだということ、いろいろな国から輸入しているということ、そしてエネルギー資源を取れる国は決まっているんだということです。
こういったことを発表していき、次に、では、エネルギーを安定して輸入するにはどうしたらいいかという話し合いに発展させました。

--子どもたちは、本物の電線を触ったり、白地図に色を塗ったりと本当に積極的に、楽しみながら授業に参加しているように思えました。

萬亀先生やはり小学生なので、そのままじっと座って講義を聞くという形式では、45分持たないんですよね。どこかで実物に触ったり、調べたり、作業したりというような時間をたっぷりとる方が意欲が湧きます。

--授業を通してわかったことを発表する際、子どもたちの方から積極的に意見というのは出てくるものなのですか?

萬亀先生ワークシートに書きこんだ後は、そこで発見したことを発表していきます。いろんな意見が出てきますよ。
先ほどの例で言うと、エネルギー資源を安定して輸入するにはどうすればいいかという話の時には、現実味があるかどうかは別として、実にさまざまなアイデアが出てきました。
今ちょうどロシアの問題があって、戦争ということに敏感になっている子どもたちがいます。グラフを見ると、輸入元としてロシアは石油、天然ガス、石炭と3つとも出てくるんですよね。そこで、戦争になったら送ってくれなくなるんじゃないかという話が出ました。結論として、それでは困るから、やはりいろんな国となかよくしないといけないんじゃないかということになったんです。

--なかよくしなきゃ、というのは非常に子どもらしい意見で微笑ましいですね。

エネルギーを安定して輸入するには、という問いに対する子どもたちの答えは「いろいろな国となかよくすることが大切」でした。

●勉強して終わりじゃもったいない、アクションまでが学習だ!
--最終的に学んだことをどのようにアウトプットしていくのでしょうか?

萬亀先生本校では「実践化」というものを大切にしています。子どもたちはエネルギー問題について学んで、生活に必要なエネルギーを大切に使っていきましょう、とまとめました。そこに地球温暖化防止という視点も加えて、「省エネルギーをみんなでしていきませんか」というような活動に進んでいます。
その時に、1人でその活動に取り組むよりも、4年生は27名で取り組んだら27倍に、全校生徒184名で取り組めば184倍に、家庭でも取り組めばさらに4倍、5倍とかなるよねと話をしました。すると、子どもたちは、「先生それだったら 三豊市全体、いやいや香川県全体がいいな」とか、さらには日本全体、世界全体がいいなとか、最終的には宇宙全体がいいなとまで言い始めました。そういった形で広げていかないと、意味がないんだという認識を持っています。

じゃあそのためにはどんな方法でやればいいかということを、子どもたちで話し合っています。ポスターを作ったらどうか、校内放送をしてはどうか、劇にして学習発表会で家庭に発信してはどうかなど、いろいろな発想が出てきています。
現在は、まず全校生に広げましょうということで、子どもたちなりに考えた省エネの7つの項目についてポスターを自由に書いています。
さらに、これを定着させるためにはポイント制にしてはどうかという意見も出て、これからその学校内で利用するポイント制のルールを決めていく予定にしています。ポイントが貯まったらバッジを渡そうかという話になって、4年生が4年生なりに考えたバッジに入れるキャラクターの投票をやりました。

--子どもたち、すごく積極的で楽しみですね。

萬亀先生はい、子どもたちのアイデアというか、考えを実現させるのが、意欲に繋がる一番の元だと思っています。

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