特集記事

教師と生徒それぞれの"分かりやすい"につながる 基本をおさえた授業作り
― 北広島町立芸北中学校 栗栖裕司先生 ―

2023/3/13

北広島町立芸北中学校では、栗栖裕司教諭による、教師向けに作成された「明日からできるエネルギー教育 授業展開例」を活用した理科の授業が行われています。今回はこの教材の製作にも携わられ、様々な授業の中で日頃から本教材を活用いただいている栗栖先生に、教材の特徴や活用方法についてお話を伺いました。

栗栖裕司先生

■教材の大きな特徴

『明日からできるエネルギー教育 授業展開例[中学校編]』

その1「学習指導要領の内容に対応した構成で基本から応用まで誰でも簡単に!」
その2「事前準備から授業の展開までわかりやすく解説!」
その3「ワークシート付で事前準備がよりスムーズに!」

●教材の特徴その1「学習指導要領の内容に対応した構成で基本から応用まで誰でも簡単に!」

――エネルギーについて、普段の教科授業の中でも取り扱うことはありますか。

栗栖先生エネルギーの分野は学年ごと必ずありますので、1学年であれば、光や音、力の分野、2学年であれば電気の授業を行っています。そして3学年では、エネルギーの変換などが含まれ、6月に今回の授業展開例を使用した授業を行いました。  

教科の単元ごとに授業の展開例がまとめられています

この教材で取り扱っている単元は、エネルギー資源やその利用、社会や生活との関わりなど幅広いものになっています。
今回取材を行った授業では、3学年理科の「燃料電池のしくみとその利用」という単元で取り扱っています。


――今回、授業展開例は授業の中でどのように活用されましたか。
栗栖先生授業展開例の特徴は、誰でも簡単に活用できる点です。今回も特別な準備は必要なく、授業展開例を事前準備で確認しました。実際の授業では、展開の流れに沿って授業を行うことでいつも通り進めることができました。

今回の授業で使用された「燃料電池のしくみとその利用」

本教材では、指導展開例が題材ごとに示されています。目標や評価基準、学習内容、使用教材と指導の留意点といったように、一般的な学習指導案(略案)の形式にあわせた内容で構成されています。さらに、学習内容にあわせた参考情報やデータ入手先、実験方法なども記載されているだけでなく、関連教科も記載されているため教科横断的な学習の実現も可能です!

――「展開の流れに沿って」とありますが、今回の授業はどんな流れで行いましたか。

栗栖先生今回行った単元は、日常生活の電池の授業です。授業展開例に記載のものと同様の流れになりますが、はじめに身近な電池を紹介し、その中に燃料電池というものがあるということで、目当てを確認しました。その後、燃料電池の利用について、実際に実験を行いました。

実験は、電気分解装置と手回し発電機を利用した電子オルゴールの2種類です。
実験後、しくみはどうなっていたかということについて発表をしてもらい、化学反応についてクラス内の理解を一致させ、最後はエネルギーの利用についてまとめました。

――導入部分ではどのようなお話をされたのですか。

栗栖先生最初は、充電できない電池として、アルカリ電池やマンガン電池を紹介しました。リモコンなどの身近なものに使われているので、多くの生徒が使用したことがあり理解していました。授業展開例の中でも、こういった身の回りの機器については例が挙げられていますね。その後、リチウム電池とリチウムイオン電池は教科書にある写真を確認し、これらの電池については見たことないという生徒もいたので、実物を回覧するといった流れで導入を行いました。

●教材の特徴その2「事前準備から授業の展開までわかりやすく解説!」

――授業展開例は、授業全体の進め方が一目でわかるような作りになっています。このような教材がある必要性や有効性についてどのようにお考えですか。

栗栖先生授業では、はじめに生徒の興味をしっかり引いて、「今日の授業でこのような力がつくと良いよね」ということを生徒の中でイメージできるような導入を行い、展開があって最後にまとめがあるというのが基本的な流れです。授業展開例は、その基本的な流れに従っているので有効的な作りになっていると思います。
また、この教材の特徴として、さまざまなデータのリンク先が掲載されていますよね。若手の先生だけでなく、経験を積んだ先生にも、授業作りをさらに深める際に活用していただけると考えています。

――今回、授業計画を立てる際に、工夫した点はありますか。
栗栖先生授業展開例に載っているものと少し変えたのは、手回し発電機を取り入れた点です。手回し発電機を使用して、自分で電気を起こすというか、電気を流し、それが燃料電池という形で化学エネルギーとして溜められて、今度は電気エネルギーとして利用することができるという流れになるよう工夫しました。ひと手間にはなりますが、生徒の経験として非常に重要だと思っています。

――授業展開例を使用することで授業作りの手助けになりましたか。
栗栖先生今回使用した授業展開例の製作には私自身も携わっています。携わった側としては、経験のある先生以上に、経験の浅い若手の先生にとって、このような教材があることは、授業作りの助けになるのではと考えています。

――今回のように実験を行う際には、やはり事前準備が大変かと思います。授業展開例があることで事前準備にも役立つと思いますか。
栗栖先生私自身も道具の準備が一番苦労していた部分でした。授業展開例があることで、(写真が掲載されているので)実験のイメージを掴んだり、必要な道具を把握したりすることができると思います。実験を初めて行う先生にとって、少しでも手助けになるのではないでしょうか。この教材を見て、事前に内容や道具を把握できると、不足分について、購入したり、探したり、近隣の学校から借りたりするといった対応にもつながると考えています。

実験を行う際にはどういった器具が必要かなどを写真で示しています

――授業における目標や評価基準は先生方が迷われるところだと思うのですが、授業展開例にこの点が記載されていることについてはいかがでしょうか。
栗栖先生特に初任の先生方は、授業の目標や評価基準について、どのようにすればよいか悩む方も多くいらっしゃるので、そういった内容がしっかり記載されているのは、大変手助けになると思います。

学習する内容ごとに、目標や評価基準が書かれています。

●教材の特徴その3「ワークシート付で事前準備がよりスムーズに!」
――授業展開例に載っているワークシートは使用やすいものになっているでしょうか。

栗栖先生授業の中で、データを取り、それを分析して考察する実験を行う場合、ワークシートが必要になります。ですので、授業展開例にあわせたワークシートが用意されていると活用もしやすいので、教材として魅力だと思います。

印刷してそのまま活用できるワークシートと
その答えも付属でついています

――教材の活用として、授業展開例の部分的な活用も考えられるのではないかと。
栗栖先生そうですね、基本的に授業展開例は、授業作りに困っている先生方に1時間単位で活用してもらうことを目的としています。ですが、この教材には、資料準備や情報の入手先などについて書かれているので、この点を授業作りをするときに組み込むことで、部分的な活用ということも可能だと思います。

●エネルギーは「身近な存在」 だからとっつきやすい! エネルギーを授業で取り扱うこと
栗栖先生比較的楽しみながらやってくれていました。電気のところは計算がたくさんあって嫌いだという子もいることはいますが、実験は楽しんで取り組んでいると思います。エネルギーなどの物理の単元は、比較的安定したデータが出やすいので、実験がしやすいんですね。
理科の教科自体は生活と非常に密接なところが多くあります。エネルギーの物理的なところは身近で多く起きていることなので、とっつきやすいのだと感じます。

――今回の授業、生徒の反応や理解度はどうでしたか。
栗栖先生おおむね理解していたと思います。今回の内容は、基本的に水の電気分解の反対の反応で、電気を得られるというものです。電気分解は既習事項なので、その逆の反応ということで理解できていると思います。実験ということで手を動かすので、そういった点においても記憶に残りやすいのではないでしょうか。

今回の実験では、「音が鳴る」という反応があるのですが、生徒たちも一生懸命試しながら活動していました。他の班から音が聞こえてくると、自分たちのも鳴るはずだよねともう一度実験装置を確認したり、やり方をもう一度考えたりといった様子も見られ、反応は良かったと思います。

――授業展開例について、他の先生方におすすめしたり、情報共有したりする機会はありますか。
栗栖先生今、初任者指導を担当しているので、その中で今回の教材の話をしました。他には、理科部会という地域の理科の先生方の集まりの中で、今私が取り組んでいる内容ということで紹介させていただくことがあります。授業展開例は、非常に良い教材として仕上がっていると思うので、資料を基に自分で考えたり、授業を進める上での指針にしたりと多くの先生方に使っていただきたいと思います。

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