特集記事

動画やデジタル世界地図を活用し、生徒自身の気付きを引き出す授業
― 加古川市立加古川中学校/山本 照久 校長・山端 宏宗 先生 ―

2022/10/5

加古川市立加古川中学校は、山本照久校長のもと、エネルギー教育を積極的に実施しています。今回取材した、山端宏宗先生による中学1年社会の授業は、アニメーションで生徒に問いを投げかける導入動画やデジタル世界地図も活用しながら、日本のエネルギー自給率がいかに低いかを直感的に伝え、考えさせる内容です。 生徒たちは、「日本はこんなにも自給率が低いのか」と驚きを見せながら、世界の状況を各自で調べて、各国の関係やエネルギー確保に必要なことについてそれぞれが理解を深め、積極的に授業に参加していました。

山本照久校長

山端宏宗先生

●「身近に感じにくいエネルギー」の固定概念を覆す授業づくり
山端先生今回の授業では、なかなか身近に感じにくいエネルギー問題への関心を高めることを目指しました。そのための教材として、教科書だけではなく、資源エネルギー庁発行の副教材「わたしたちのくらしとエネルギー」導入動画と、「エネルギーデータ まるっと World Map!」を使うことを決めました。動画を用いることで授業への興味を高められますし、デジタル地図を使えば、グラフやイラストなど文字では伝わりにくい内容も直感的に理解してもらえることが期待できます。

地図上には各国の自給率や一次エネルギー供給構成などが
イラストとともに表示されます。

--今回の学習指導案を作るときに気をつけたことは?
山端先生エネルギーに関心はあっても、これまでに深く考える機会がなかった生徒は多くいると思います。そこで、身近でわかりやすく、イメージしやすい方法で伝えることを意識しました。
最初は、みんなが活動するための「エネルギー」について問いかけることからはじめて、次に、クラス担任の先生が栄養ドリンクをたくさん飲むので、「先生にとってのエネルギーは何?」のように聞いてみるなど。声を揃えて答えていましたが(笑)、生徒が興味を持ちそうな話題をたくさん出すようにしました。

エネルギーに関しての身近なたとえ話も用いることで、
生徒たちは自分事という意識で授業に参加できます。

山本校長エネルギー自給率の問題は大切なことなんですが、詳しく扱う教科書は少なく、授業で取り上げるのが難しいんです。でも、エネルギーの安定供給は大切なこととして言われているので、生徒たちも興味があると思います。そこで、わかりやすく伝えられるように作られていて、誰でもすぐに使うことができるデジタル地図や副教材が必要なのです。

山端先生授業の導入で、動画を使いました。動画を見ることで、生徒たちは楽しい授業がはじまるのではと、興味を持って食いついてくれますね。日本の自給率をピザの残量にたとえたシーンは子どもたちも面白がっていました。

「エネルギーデータ まるっと World Map!」は、地図をクリックすると、その国の情報をすぐに見られるのが良いところです。例えば、日本はエネルギー自給率が11%と、明らかに低いことを知ることができます。実際に、生徒たちからは「日本低くてやばい!」「他の国すごいな…」という声も上がりましたね。このように視覚からの情報が直感的な理解を深めることにもつながります。2、3年生になっても、社会科で資源について学ぶときに活用したいですね。

地図上の国名をタップするとその国の詳細情報が
一覧で確認できます。

生徒たちはクイズ形式の導入動画で、
日本のエネルギー自給率が11%であることを知ります。

山本校長今回の授業では取り上げませんでしたが、例えば水素の技術力は日本が1位なんです。「エネルギーデータ まるっと World Map!」で調べれば、日本は技術力が高いこともわかります。上手に活用すれば、イメージしやすく、理解を広げて、深めていくことができます。

●資料を自分なりに読み解いて考えた意見だからこそ、みんなに共有したい!
--教材を使った生徒の様子は?
山端先生授業中も積極的に発言してくれました。授業後のアンケートでも、「日本は工業が発展している一方、資源は少ないことが分かりました」や「日本がどれだけ海外に頼っているか分かり海外と仲良くしなければいけないと思った」など一歩踏み込んだ感想も多くありました。

山本校長授業中、生徒たちは、マップを見ながら様々な発言をしてくれましたね。私の想像以上に活用してくれていると感じました。
今回の授業では、日本はエネルギー資源が少ないということに気づいたことが、まずは大きな成果です。

生徒たちは積極的に手を上げて発言。
「自給率と国土の大きさに関係があるのでは?」など、
「エネルギーデータ まるっと World Map!」を見て気づいた様々な意見が発表されました。

「これからの日本でエネルギーを確保するために必要なことは何だろう?」の問いかけに対してオンラインで意見を発信。
再生可能エネルギー、新エネルギーの開発、外国との関係 など
様々な観点からの発表がありました

●エネルギーは深い!だからこそ面白い!さらに学びを深める授業へ
--今後、生徒の理解を深めるためのアウトプットができる授業は計画されていますか?
山端先生今回、日本のエネルギー自給率が11%ということを何度も強調しました。生徒たちは、日本は資源が少なく、輸入に頼っていることを理解できたと思います。
この後は、総合的な学習の時間でもエネルギーの授業を行います。今回、日本のエネルギー自給率が低いことを知った上で、どのように対策していくべきかを調べて、話し合いながら、「エネルギー新聞」を作ることを考えています。

--校長先生が、エネルギー教育を行うようになったきっかけは?
山本校長以前に在籍した中学校が、省エネルギー教育モデル校となり、私がその担当になりました。それがきっかけで、エネルギー教育に興味を持つようになったんです。
当時私は社会科の教諭でしたが、知識を教え込むばかりではなく、生徒に考えさせる授業が好きでした。エネルギー授業は、一見難しく思えるかもしれませんが、生徒にとっても関心を持ちやすい課題です。社会とのつながりも深く、国際社会や政治、経済にもつながっていきます。

山本校長今日の授業が、生徒たちにとってエネルギーについて考えるきっかけになってくれれば、理解が広がると思います。再生可能エネルギーや、新しい技術について調べていくこともいいですね。それ以外にも、経済や外交へと内容を広げるなど、商社の人に話を聞くような経験もできればしていきたいです。
「SDGsエネルギー学習推進ベースキャンプ」のウェブページにも今日の授業について学習指導案を載せていますが、あくまで汎用性のある内容なので、それぞれの学校や生徒にあった授業を開発していってもらえるといいですね。

ページトップ ページトップ